しっかり話を聞けていますか?
学校ではいろんなことを勉強します。
ただ、聞き方や話し方を勉強したことがありますか?と質問をすると、殆どの方が“NO”「したことがない」と答えます。
コミュニケーションを取っていくためには、聞く、話すはとても大切です。
取引先の役員から「社員と個別で面接をしているのですが、どうも上手くいっていないと思うのです」と相談がありました。
顧問先の社長からは「会議で社員からの発言が少ないんですよ。もっと活発な会議にしたいんですが・・・」とのご相談をいただき、オブザーバーとして会議に参加することにしました。
個別面接で上手くいっていないのも、会議で発言が少ないのも、原因は同じです。
どちらも、ちゃんと部下の意見を聞けていなかったことが原因です。
上司の立場、部下の立場
個別面接では、部下の発言に対して、役員が善し悪しをすぐに判断していました。
会議の席では、社員の発言が終わらないうちに社長が社員の発言を遮っていました。
上司は、立場的にも部下に意見をしたくなります。
多くの上司がそうですし、いままでそうしてきたのだと思います。
では、部下の気持ちはどうでしょう?
部下の立場からすれば、社長や役員が話したことに意見を言うのは、とても難しいことです。
これからの会社の発展のために考えたこと、現在の業務のこと、これからしたい仕事、組織への希望など、社長や役員に聞いてもらいたいことがたくさんあるはずです。
そんなチャンスである個別面接や会議の場が上司の演説会になってしまっては、部下の話を聞いたことにはなりません。
面接で話す割合は、上司が3割、部下が7割くらいが理想です。
会議では、社長は社員の話を最後まで聞き、最終結論を出せばいいのです。
現実には、割合が逆になってしまうことや会議での主役が社長になってしまうことが多いのではないでしょうか?
これでは、自分の話を聞いてくれないと思い、部下には欲求不満が残ります。
話を聞いてくれなければ、自分は尊重されていないと部下が思っても仕方がありません。
本当の「傾聴」とは?
社員一人ひとりが尊重され、信頼関係を作るには、話しを聞いてくれる、否定されない「傾聴」を経営幹部が率先してすることが必要です。
傾聴のポイントは
1.話を最後まで、聞く
2.相手の目を見て、聞く
3.発言してくれたことに感謝する
4.発言の内容を要約する
5.どんなに気に入らない発言でも、表情に表さない
言葉で書けば簡単なことですが、これがなかなかできません。
経営幹部の方々は、部下の話を途中で遮ってしまうことも、部下の意見を否定してしまうこともあります。
話を途中で遮られたり、自分の意見を否定されたりすることの不快感は、体験をしないとわかりません。
傾聴されることの心地よさ、傾聴されないことの不快さは、「傾聴ワーク」で体験をするとよくわかります。
一般的に「傾聴」と言われますが、私どもが考える「傾聴」には1つ大きな違いがあります。
それは、話を聞くだけではなくて、聞き手(上司)の価値観を出さないことです。
自分の意見と違ったことを聞くと、どうしても「それはわかるけれども、私はこう考える!」と言ったりします。
これでは、話を聞いているようで、話し手の意見を否定していることと同じです。
言葉に出さないまでも、自分の意見と違うことを聞くと表情が曇ったり、眉間にしわが寄ったりすることもあります。
聞き手が気づいていなくても表情や仕草だけで、相手に本音が伝わります。
これも、自分の価値観を相手に押しつけていることになってしまい、話し手は、「結局、わかってくれないんだ」とあきらめてしまうのです。
相手の話を聞くときには、聞き手の価値観を抑えなければなりません。
純粋に話を聞いてもらえれば、相手は自分のことを気にかけてもらっていると感じます。
自分のことを気にかけてもらっていれば、自分も相手のことを信頼します。
信頼感が出来た上で意見を伝えれば、相手に真意が伝わりコミュニケーションが取れた状態になります。
コップの水が一杯な時に水を注いでも漏れてしまうだけですが、コップが空になっていれば水は充分に注げます。
相手の話を聞かずに自分の意見だけを言うのがコップの水が一杯の状態。
相手の話を充分に聞いてから、自分の意見を言うのが空のコップに水を注いでいる状態です。
自分の意見を聞いてもらえた、会社に認められた、会社に貢献できた、そんな風に社員が考えられるようになったら、心理的安全なチームづくりのベースができたと言えます